インターネット選挙

【2013年5月10日現在】

1.ネット選挙概要

1.1 はじめに

平成25年4月19日、インターネット選挙運動解禁に係る公職選挙法の一部を改正する法律(議員立法)が成立した。本改正は公布の日(平成25年4月26日)から起算して1月を経過した日(同年5月26日)から施行される。(改正附則1条)。

ネット選挙解禁前(今まで)は、選挙運動にわたらない純粋な政治活動として、インターネットのホームページを利用することは自由にできていた。しかし、純粋な政治活動として使用するホームページであっても、候補者が選挙運動期間中に開設したり、書き換えをすることは、新たな文書図画の頒布とみなされ、選挙運動の禁止を免れる行為として公職選挙法に違反となっていた。

1.2 海外の動向

先進国では既にネット選挙が行われている。
米国のネット選挙では、メールに限らず、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアがほぼ無制限に使われている。
韓国のネット選挙では、各陣営の支持者がツイッターなどで投票を呼びかけ、投票率が伸びたと言われている。

2.ネット選挙の主なポイント(地方議員関連を公職選挙法より抜粋)

2.1 一番ルールが複雑な電子メール

今回は、まず候補者・政党等のみに選挙運動用電子メールを解禁することとし、候補者・政党等以外の者の解禁については、今後の検討課題となっている。

フェイスブックやLINEなどSNSのユーザー間でやりとりするメッセージ機能は、「電子メール」ではなく、「ウェブサイト等」に含まれる。したがって、候補者・政党等以外の者も、SNSのユーザー間でやりとりするメッセージ機能を利用して選挙運動用文書図画を頒布することができる。

選挙運動用電子メールは、選挙運動用電子メール送信者に対し電子メールアドレスを自ら通知した者のうち、以下の同意が必要である。 ☆これらを証する記録は保存しておかなければならない。
① 選挙運動用電子メールの送信の求め・同意をした者
② 政治活動用電子メール(普段から発行しているメールマガジン等)の継続的な受信者であって、選挙運動用電子メールの送信の通知に対し、送信しないよう求める通知をしなかったもの
 
一般論として、「選挙運動用電子メールを送信してもよいか」という確認メールを送ることは、それ自体が直ちに公職選挙法の規定に抵触するものではないものと考えられる。
選挙運動用電子メールの送信の求め・同意は、「あらかじめ」得る必要はあるが、「選挙ごとに」得る必要はない。

2.2 連絡先の表示義務

ホームページ、ブログ、メール、掲示板上に、メールアドレスやTwitterユーザー名などの候補者と直接連絡が取れる表示を義務づける(罰則なし)。FacebookやTwitterなどソーシャルネットワーキングサービス【SNS】は、身元が分かるため連絡先の表示は不要となっている。
掲示板等に書き込む際に名乗るニックネームであるハンドルネームのみの記載では認められないが、そこに張られたリンク先のウェブサイトに連絡先情報が記載されている場合には、表示義務を果たしていると考えられる。

2.3 誹謗・中傷

現行法下においても、候補者についての虚偽事項等の公表が、
① 虚偽事項公表罪(公職選挙法235条2項、4年以下の懲役・禁錮又は100万円以下の罰金)
② 名誉毀損罪(刑法230条1項、3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金)
③ 侮辱罪(刑法231条、拘留又は科料)
に該当する場合には、刑事罰の対象となり得る。

インターネット選挙運動を解禁する本改正が施行されると、候補者は、自らのウェブサイト等に反論のための文書図画を掲載したり、相手方のウェブサイト等に表示された電子メールアドレス等に宛てて反論のための電子メール等を送信したりするなど、インターネット等を利用する方法により反論することができるようになる。

2.4 立候補時のウェブサイト公開

候補者・政党等のウェブサイトのURLの周知については、省令改正(立候補届出書類の様式の改正)により、立候補届出の際に、候補者・政党等が各々1のウェブサイトのURLを届け出ることができることとし、
① 各選管が、候補者・政党等が届け出た各々1のウェブサイトのURLを告示
② 各選管が、届出のあった候補者・政党等のウェブサイトのURLを報道機関等に提供
③ 各選管が、ウェブサイトに、候補者・政党等のウェブサイトのURLの一覧を掲載
という対応をすることとしている。

2.5 買収

業者(業者の社員)に、選挙運動用ウェブサイトや選挙運動用電子メールに掲載する文案を主体的に企画作成させる場合、報酬を支払うことは買収となるおそれが高いものと考えられる。
業者に、候補者に対する誹謗中傷を機械的に監視させる場合、報酬を支払うことは買収とはならないものと考えられる。
現行法と同様、インターネット選挙運動を行った者に対し報酬を支給すれば、買収罪に該当する。

2.6 選挙当日

選挙期日の当日における選挙運動用文書図画の頒布については、従前と同じく禁止されており、ウェブサイトの更新や選挙運動用電子メールの送信は行うことができない(公職選挙法129条)。

選挙運動期間中にウェブサイトに掲載された選挙運動用文書図画は、選挙期日の当日においても、削除することなくそのまま残しておくことができる(公職選挙法142条の3第2項)。

3.留意点

  • 情報はすぐに拡散するので、情報発信の内容は慎重に行う。(日本中へ配信されることに留意)
  • 候補者からのメールやフェイスブックの情報発信が多すぎると苦情になる恐れがある。
  • 名誉毀損や中傷、他人へのなりすましなどをどう防ぐか・・・(選管や警察への通報が一番早い?候補者以外については、プロバイダー等へ削除申出)

4.その他

  • 投票率の増加(韓国では10%以上の上昇)、特に若者世代の投票率上昇が期待される。
  • 町村議会議員の選挙期間は短いため、日々の政治活動から対応したほうがよい?!
  • ネット選挙のルールを、候補者・有権者にどう周知できるかが大きな課題。

※上記の取扱いは自己責任でお願いします。 (当方での責任は負いかねます)

【参考】
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