研修概要
・講師 法政大学教授 ジャーナリスト 萩谷 順 氏
・演題 「今後の日本経済・政局について-地方活性化のために-」
研修内容
1.情報の真偽
・アベノミクスは、概ね成功に向かっているとの評価。
あらゆる判断による身の回りの状況が第1の判断基準。
地域の実感に伝わっていない。
・客観的にみたらどうなのか?地主とホームレースでは評価が違う。
・マスコミ情報は頼りになるか? →事実・根拠の把握が重要
・国民の多くはマスコミの優れたところ・良さを理解していない。
マスコミはそれほど信頼できるものではない。
・アベノミクスのマスコミ評価は、日経・読売・産経の評価が高い。
朝日・日は否定的な評価。
・マスコミは、「世の中を見るメガネ」。
メガネの色、曇り具合により見え方が違う。
派閥記者は、情報操作されやすい。
・SNSも混乱を助長している。 →情報が混乱
・情報の世界でも産直(生の情報)を求めている。
・山本太郎参議院議員は、日本国憲法・議会制民主主義・国民主権を否定している。
物事は反対の立場にするとよく見える。
・マスコミ報道は、国内より利害関係がない国外の報道を参照するのが役に立つ。
例えば、幕末維新の「アーネスト・サトウ」は、「自由主義社会」「言論の自由」のジャーナリスト。
2.決められない政治と経済成長
・以前の日本と今のアメリカは捻じれ議会。
・世界が期待する「日本の再生」
・アベノミクス3本の矢は、「国民がもっと稼げるようにする」ということ。
・経済成長とは、「人・物・金」を生産性の高い企業・産業に移すこと。
・最大の障害は、人間の本性。
昨日までの同じことをいくら汗しても無駄になってしまう。
日本だけが今までどおり昨日と同じことをしている。
・人類の資源(人・物・金)には限度がある。
生産性の低い企業・産業は退場、すなわち倒産・精算されなければならない。
・当時の経済成長時代には若い人がどんどん増えていた。
少子高齢化により、人というリソースに限りが出てくる。
3.先進国共通の病気
・経済成長の停止、少子高齢化、社会保障・社会福祉の支出増大。
社会保険料と税金で賄いきれなくなっている。
・国債発行による膨大な借金の山、日本は1000兆円の累積債務。
・1000兆円の借金を返せないと、日本発の世界恐慌を引き起こす可能性がある。
世界は一斉に日本売りに走り、長期金利が跳ね上がる。
・日本経済の崩壊で、多くの人が職を失い、老人が路頭に迷う。
ソ連が崩壊したロシアも、年金がほとんどゼロになった。
4.危機を回避するには?
・日本が積みあがった国債を返済できるという安心感を世界に与えること。
安心感の根拠となるのが「消費税率の引き上げ」と「日本が経済成長に向かって舵をとること」
・先進国において、経済の安定は「消費税の引き上げ」という共通の理解がある。
・2013年純債務残高は、1位ギリシアでGDPの176%、2位日本で143%。
IMF見通しでは、2017年に日本が世界一位になる。
・世界の日本売りが起きないのは、ファンダメンタルと消費税引き上げの余力があるから。
・消費税の「逆進性」を考えるならば、所得税(累進性)を合わせて考えなければ公正ではない。
・欧米諸国の先進国は、「軽減税率」を導入している。
・先進国の国民負担率(国民全体が払っている租税負担と社会保険料負担を足したもの)は、2010年GDP比で38.5%。
・所得税負担の国際比較で、日本人の1850万人は所得税を払っていない。
・諸外国は、「日本における中低所得者の限界税率が低い」ことを認めているから日本売りに出ない。
もし英国並みに限界税率を引き上げると、消費税引き上げと同様のマイナス効果となる。
・生活水準を維持する考えであれば、経済成長を達成して、増税傾向を達成することが必要。
5.経済成長のために必要なことは?
・雇用の流動化、人を解雇しやすくし、雇いやすくする。
・ドイツ(当時失業率15% 解雇規制の緩和)の成功先例。
従業員の解雇規制が緩やかであれば、経済成長時に雇用し、低調のときに別の成長産業へ移ってもらえばよい。
日本には800~900万人の企業内失業者がいる。
企業内失業者を抱える大企業には、質の高い優秀な人材がいる。
・TPPへの加盟も産業構造の高度化に貢献する。
現状は、減反政策が根幹にある。生産性の高い農産物まで巻き込まれている。
果樹・野菜は兼業しにくい。高い値段を設定しても売れる。
6.先進国の罠とは?
・社会福祉国家・議会制国家であることによって起こりえる。
・国民に支払われる社会保障給付額は、108兆円(GDPの22.3%)
高齢化によって毎年1兆円近く増えている。
・年金保険制度をつくったのは19世紀末のビスマルク。
年金支給年齢は75歳、当時のドイツ人平均寿命は50才代。
・社会保障を実現するのは至難の業。
・給付を負担する豊かな人(3割)が、給付を受け取る豊かでない人(7割)を助ける。(所得の再分配)
・厚労省の4年前データでは、世帯年収550万円、昨年のサラリーマン平均年収407万円。
・先進国とは、社会福祉国家と民主主義を理念とする。
この理念のみを追い求めると、借金が増え、国は破綻する。 → 先進国の罠
7.これからの経済成長
・社会保障給付を減らすのではなく、経済成長するのが一番強い味方。
社会福祉国家の実現を可能にしたのは、経済成長。
・池田元首相の所得倍増計画50年で成果が出ている。
経済政策の成果は、1~2年で出ない。
・安倍首相は規制緩和を目白押し。
7年後の東京オリンピックは安倍首相にとって幸運。わかりやすく適当な基幹の目標ができた。
日本は、経済再生の道を歩み始めている。
・日本の再生は、先進国病で悩む再生・至難であった事業のモデルになる。
→ドイツだけが克服
・基本は、「稼ぐに追いつく貧乏なし」、その鍵は地方にある。
・鄧小平が唱えた先富論「可能な者から先に裕福になれ。そして落伍した者を助けよ」。
今の中国では忘れられているが、日本人は決して忘れることはない。
感想
様々な情報は、「一歩下がって客観的に判断すること」が重要であると再認識した。
これから日本が目指す経済成長の流れに乗って、湯前町も産業基盤の成長を追究していかなければならないと強く感じた。
余談ですが、午後から行われたグラウンドゴルフ交流会において、団体と個人で優勝しました。(ビギナーズラック)